社内スタートアップのリアル:DM検証失敗から得た教訓

はじめに

こんにちは!UIUXデザイナーの里見です!

今回は私たちが昨年11月まで挑戦していた新規事業「OshiTie!(オシタイ)」について、その挑戦がなぜ失敗に終わってしまったのかを、特にダイレクトメッセージを使ったアタック検証(以下DMアタック検証)にフォーカスして振り返りたいと思います。

「失敗談」と聞いて「なんか重そう。。」と思った方もいらっしゃると思いますが、
色んな挑戦を繰り返した過程をポジティブに表現して書いていきますので、ぜひ最後までお付き合いいただけると嬉しく思います!

背景:OshiTie!とは?

「OshiTie!」は、インフルエンサーと推し活ユーザー(インフルエンサーを推している人)の熱い絆を活用し、企業とインフルエンサーの最適なマッチングを実現し、ファンが喜ぶタイアップを目指したインフルエンサーマーケティングの新規事業プロジェクトでした。

以下が実際に「OshiTie!」を定義したものです。

「OshiTie!」は、インフルエンサーを単に分析するだけではなく、インフルエンサーと推し活ユーザーの間で形成されるメディアコンテクスト(独自の文脈)を分析・可視化します。これにより、企業目線の情報を生活者目線の情報に変換し、推し活ユーザーに受け入れられ喜ばれるタイアップ広告を実現します。

例えば、

ある推し活ユーザーが「推しの〇〇さんが紹介していたアイテムを使ってみたい!」と言った時、そのアイテムに対する感情的な反応は、企業にとって非常に価値のあるインサイトとなります。

これをうまく捉えて、企業がマーケティング施策を考える際にファンの感情を反映させることで、より独自の視点と推し活ユーザーにも寄り添ったアプローチができるのではないかと考えました。  
「推し活ユーザーの声を活用すれば、新しいインフルエンサーマーケティングが実現できる!」
という信念を胸に、私たちの壮大な計画はスタートしました。

ステップ1:推し活ユーザーにインタビューを実施して最適なソリューションを決める(CPFフェーズ)

ステップ2:推し活ユーザーの声を集めるためのDMアタック検証と広告主から受注を獲得する(PSFフェーズ)

ステップ3:タイアップを成功させて、企業・推し活ユーザー・インフルエンサーの三方よしになる仕組みを作る!

PSFフェーズでは、この事業の肝となるインフルエンサーの推し活ユーザーの生の声を収集する必要がありました。
そこで実施したのが「DMを使った検証」です。

DMアタック検証:プロジェクトの肝となる挑戦

「OshiTie!」が成功するためには、推し活ユーザーの生の声を集めることが非常に重要でした。その声を基にインフルエンサーと企業のマッチングを実現し、推し活ユーザーが本当に喜ぶタイアップを作ることが私たちの目標だったためです。

そこで私たちが選んだ手法が、DM(ダイレクトメッセージ)を使ったユーザー検証でした。 DMは、直接推し活ユーザーにアプローチしてリアルな反応を得られるだけでなく、比較的低コスト(実質人的リソースのみ)で検証を進められる手段として最適だと考えました。  

まずは無料で試せる方法をやってみて、その結果次第で有料のアンケートサイトなどを活用してみる方向で考え、推し活ユーザーにアンケートへの協力を依頼するという非常にシンプルな方法を試みました。

DM検証プラットフォームにXを選んだ理由

プラットフォームをX(旧:Twitter)を選んだ理由としては、推し活ユーザーが沢山ポストしており、アカウント名やプロフィール欄を見れば誰のファンなのかが特定しやすいためです。

推し活ユーザーに直接コンタクトを取る上でも最適だと考え、アンケートフォームを添付したDMを送ることで回答してくれるのではないかと考えました。

検証の具体的な流れ

ターゲットの絞り込み

DMを送る対象として選んだのは、主にX(旧:Twitter)で活動している推し活ユーザーです。

推し活をしている人を以下の条件でターゲットを絞り込みました。

  • 推し活に関連するポスト(例:#推し活、#オタクライフ)を頻繁に使用しているユーザー
  • 特定インフルエンサーの投稿に積極的に反応(リツイート、いいね)しているユーザー
  • プロフィールに推し活や関連ワードを明記しているアカウント(例:「◯◯推し」「オタ活中」)

上記は一例で実際にはもっと詳しく定義していました。

これらを基に検索・フィルタリングを行い、200件ほどのターゲットリストを作成しました。

検証のリスクと対策

DM検証を進めるにあたって、社内の法務担当者と事前にいくつかのリスクについてすり合わせを行いました。主な懸念点は以下に記載いたしました。

法務担当者からの懸念

  • アンケートがDMを送った推し活ユーザーに公開される可能性があるため、DMの内容や調査対象に関して慎重に扱う必要がある。
  • Xアカウントの利用者の素性が不明なため、収集したデータが信頼に足るものか確認が必要である。
  • 取引内容が未定の状態で情報収集を行うことに対する懸念がある。

これらのリスクを踏まえて、チームで話し合い回避策を考えました。

私たちが考えた回避策

  • 特定のインフルエンサーの名前を出さずにアンケートをとる !
    (このインフルエンサーを推しとして回答してくれるだろうと予測し依頼する)
  • 保険として、アンケート冒頭にSNS掲載を禁止する同意チェック欄を設ける

このように1回目のDM検証の準備を着々と進めていきました。

1回目のDM送信の内容

作成したターゲットリストに基づき、チームメンバーで手分けしてDMを送信しました。

内容については以下のようなメッセージを送りました。

DMの内容はこんな感じ

まずは、推し活ユーザーさんたちに親しみを持ってもらえるよう、シンプルかつ誠実な文章を心がけました。

自己紹介

「突然のご連絡失礼します!OshiTie!サービス運営でございます。」 まず、運営しているサービスについて簡単に説明し、丁寧さを重視しました。

アンケートの目的

「推し活をされている方のご意見を収集し、今後の広告施策や市場調査に役立てたいと考えています。」 「あなたの声が、より良いサービスを作るために役立ちます!」というメッセージを伝えることを意識しました。

簡単さのアピール

「所要時間は3~5分程度です。」 「簡単だから安心してね!」という気持ちを込めて、回答の負担が少ないことを伝えました。

アンケートフォームはGoogleフォームを活用

誰もが馴染みのあるGoogleフォームを活用することで違和感なく回答していただけるのでは?と考えました。また、よりターゲットに私たちのサービスを知ってもらい、安心感を与えるためにLPやサービスの公式Xアカウントも用意しました。(以下が実際のアンケートフォームです。)

実際に作成したアンケート

以下が実際のLP、Xの公式アカウントです!

実際に作成したOshiTie!のLP

実際に活用していたXアカウント

1回目のDM検証結果:厳しい現実

DMを送信した対象と数

  • インフルエンサー1(美容系YouTuber):50アカウント
  • インフルエンサー2(筋肉系YouTuber):7アカウント

DMは合計57名に送信しました。この時DM未解放や認証なしアカウントにはDM送信ができなかったため、対象アカウントを200件リストアップしていましたが実際に送信できたのが57アカウントでした。

アンケート回答

  • 回答数: 0件
  • 回答率: 0%
  • モニター協力承諾率: 0%

※「モニター協力承諾率」とは、アンケートに回答した後、その後の調査やインタビューに協力しても良いという意思を示してもらった割合を指します。

なんとも厳しい結果でした。。
1回目のDM検証では、アンケート回答率が0%という厳しい結果となりました。。。
個人的には、最初の段階で予想以上に協力が得られないことに驚きました。
「推し活ユーザーの皆さんは積極的に協力してくれるだろう」と軽く考えていた部分もあったので、この結果を受けて大変ショックを受けました。。

しかし私たちは挫けません!
1回目の検証結果を受けてチーム全体でFigJam上に以下のように改善案を出し合いました。

主な改善案は以下の通りです!

具体的な改善ポイント

DM文を親しみやすく修正

1回目のDMでは「推し」という言葉が強すぎて一部のユーザーには答えづらく思われた可能性があるため、「推し」という言葉を避け、「好きな~」「よく見ている~」などの柔らかい表現に変更しました。

ターゲットを再選定

美容系やフィットネス系ではなく、より多くのコアファンが集まるVTuberや芸人といった異なるジャンルのインフルエンサーを選定しました。

公式アカウントの改善

信頼性を高め、DMの受け手に「怪しいアカウントではない」と思ってもらえるように以下の施策をしてみました。

  • インフルエンサーのイベントをリポスト
  • フォロワーを増やす
  • プロフィール欄の文章を親しみやすいものに変更
  • アンケートの答え方をポスト

アンケートを簡略化

設問数を5問から3問に減らし、回答時間を1分に削減。回答のハードルを下げて心理的なハードルを減らすことを意識しました。

DM文にアンケートフォームの直リンクを追加

一部のDMで、LP(ランディングページ)を経由せず、直接フォームに遷移できるリンクを貼り、ステップ数を削減しました。

2回目のDMアタック検証:改善への挑戦

1回目の結果を受けて、DMやアンケート、Xの公式アカウントを以下のように修正しました。

改善を加えた後のアンケート

改善を加えた後のXアカウント

2回目のDM検証結果:またもや厳しさを突きつけられる

DMを送信した対象と数

  • インフルエンサー1(節約系YouTuber):23アカウント
  • インフルエンサー2(VTuber):100アカウント
  • インフルエンサー3(雑談/ゲーム配信者):100アカウント

アンケート回答結果

  • 回答数:7件
  • 回答率:3%
  • モニター協力承諾率:86%(6/7)

結果の内訳

  • Aパターン(LP経由):回答数2件
  • Bパターン(直リンク):回答数5件

回答内容

  • インフルエンサー名の回答率
    • 意図したインフルエンサー名を答えたのは7件中2件(29%)

数件の差ではありますが、直リンク型のDMがより高い回答を得ることができました。 しかし、現実は厳しく実際の回答数は7件で、その回答率はたったの3%でした。。0件よりも改善はされたものの、DMアタックを活用して推し活ユーザーの声を集めることのハードルがかなり高いと実感しました。

直接推し活ユーザーの声を集めるためにどれだけ労力と時間が必要なのだろう。。。とこの時に思いました。

また実際にこのインフルエンサーのファンだろうという人にDMを送りましたが、実際の回答で意図したインフルエンサー名を答えたのは7件中2件と非常に低い結果となってしまいました。。  

実際にタイアップ企画をする際にインフルエンサーを5~10名リストアップする必要があります。そして、推し活ユーザーの声は1インフルエンサーあたり、5件は欲しい!と考えていたため、この結果を受けて一体どれだけのDMを送らなければいけないのだろう。。。と絶望しました。。。  

とはいえ、2回目のDM検証を分析すると少し面白いことがわかりました!

2回目のDM検証:回答データの詳細分析

回答タイミング

  • 2時間以内の回答が多い
  • DMを送信後、最初の2時間で約70%の回答が集まりました。 これにより、リアルタイムでのレスポンスが期待できると分かりました。
  • 夜の時間帯が有利

特に18時~22時に送信したDMに対して回答率が高く、ターゲット層がアクティブな時間帯であると推測されます。これは仕事から帰宅し、SNSを利用する時間にDMを確認しアンケートを回答したことが考えられます。

協力承諾率

  • 7件中6件が追加協力を承諾

アンケートに回答する時点で、協力意欲が高いユーザーが多いことが確認できました。

DM検証の失敗からの学び

「OshiTie!」プロジェクトのDMアタック検証は、残念ながら1回目、2回目ともに期待していた成果を得ることができませんでした。しかし、この挑戦を通じて、サービスの核となる「DMアタックでアンケートに回答してもらうこと」が想像以上に難しいという現実を深く理解することができました。

「推し活ユーザーの声を集める」の壁

OshiTie!は、インフルエンサーと企業を繋ぐタイアップ広告を、ファンの声を起点に実現しようというサービスです。そのため、プロジェクトの成功には、推し活ユーザーの本音や熱量をいかに収集するかが非常に重要なポイントでした。

しかし、実際に検証を進めていく中で、次のような課題が浮き彫りになりました。

ターゲティングの難しさ

推し活ユーザーの中で、どこまでが「本当に意見を聞きたいコアファン」なのかを見極めるのが難しく、結果として幅広いターゲットにアプローチすることになりました。その中でサービスの趣旨に合う回答を得るのは簡単ではありませんでした。

アンケート回答率の低さ

DMを使った直接的なアプローチでも、回答率はたったの3%にとどまりました。ファンの協力を得るためには、文面やインセンティブだけでは不十分で、さらに深い信頼や動機付けが必要だと感じました。

スケールアップの困難さ

「推し活ユーザーの声を5〜10件集めるために、膨大なDMを送らなければならない」という現実が見えたことで、この方法ではスケールしないことが分かり別の方法を検討する必要がありました。

まとめ:それでも得られた学び

1回目、2回目の挑戦を通じて得られた学びはたくさんありました。その中でも特に印象深かったのは、「ユーザー視点」の大切さです。

まず、DMを受け取ったユーザーが最初に目にする公式アカウントの信頼性を上げることが非常に重要だとわかりました。プロフィール欄一つとっても親しみやすさを感じてもらえるかどうかで、アンケートの回答率は変わると気づきましたし、信頼感を与えるために普段の投稿内容も意識する必要があると学びました。

また、アンケートやLPの設計についても、多くの気づきがありました。 例えば、DMを受け取ったユーザーが「これって本当に1分で終わるの?」と不安を感じないように、アンケート設問を極力シンプルにし、実際に1分以内で終わる内容に削ぎ落としました。
そして、DMに直接アンケートフォームへのリンクを貼るなど、クリックの手間を減らす工夫も行いました。これにより、少しでも回答へのハードルを下げることができたと感じています。
 

さらに、検証を進める中で、ユーザーの動きから得られるデータも重要な学びとなりました。

DMを送信してから2時間以内に多くの回答が集まり、特に18時から22時に送信した場合に回答率が高くなるという傾向が分かりました。
このことから、ターゲットユーザーのライフスタイルやアクティブな時間帯を意識することで、次回以降のアプローチに活かせる可能性を感じました。

こうした細かい試行錯誤を通じて、「やってみないと分からないこと」が本当にたくさんあるということを痛感しました。
DMで送る文言や、アンケートの設問数、アカウントを充実させることなど想像していた以上に細かい調整が必要であることを学びました。

挑戦してみての感想

「OshiTie!」は、企業・推し活ユーザー・インフルエンサーの三方よしを実現するという壮大な目標を掲げてスタートしました。しかし、事業を続ける中で、コアファンの声を集める仕組みを構築し、それをスケールさせることの難しさに直面しました。

最終的には、チームメンバーで話し合い事業の実現可能性を踏まえ、「OshiTie!」は停止するという結論に至りました。この決断は非常に悔しいものでしたが、それでも私たちは多くの学びを得ることができたと感じています。 私がいうのもなんですが、、この記事を読んでくださった皆さんには、ぜひ「失敗から学ぶことの価値」をお伝えしたいです。

挑戦することで得られた知見、特に、新規事業に真剣に取り組まないと味わえない経験はこれからの未来に繋がる重要な財産になったと感じています。

今回取り上げさせていただいた、2回のDM検証は簡単そうに見えて、結果を出すには非常に難しいものでした。。

私たちは「OshiTie!」という形ではその目標を達成できませんでしたが、そこで得た経験や学びは、次の挑戦に必ず活かしていきたいと思います!  

最後までお読みいただき、ありがとうございました!
この経験をまた新たなプロジェクトにも活かしていけるように努力を続けていこうと思います!