技術知識ゼロの元ゴリゴリ営業マンがPdMとして新規プロダクト開発に着手したらやってることは営業だった件(MVPまでの道のり編)

『顧客の声を聞け!!』

はじめまして。ADWAYS DEEEの新規プロダクト開発を担当しているシニアプロダクトマネージャーの小田です。
主に新規プロダクト開発のPdMとして現在はライブコマース事業の立ち上げを行っております。
今回は新規プロダクト開発を行う上で、以下の3つの学んだことに関してお話できればと思います。
この『顧客の声を聞け!!』はわからない時の『おまじない』のような、迷ったらこれという言葉となりますので、ぜひ参考にしていただきたいです。

≪学んだこと≫
①顧客の声を聞け。社内に情報はなかった。情報は社外にある。
②営業力は新規事業において必須。粘り強さと根気強さ。
③仮説と検証はシンプルにしてステップアップを意識。

営業出身者でも、コードを書けなくても、どのように新規プロダクト開発を進めていき、どのようなPdM業務を行っているかの学びを共有できればと思います。新規プロダクト開発に興味がある方、ライブコマースに興味がある方、現在営業職でPdMへのジョブチェンジに興味のある方に、ぜひ読んでいただければと思います。

1点注意がございます。
記載の内容は実際に取り組んだ内容となる為、結果的には間違っていたこともございますので、反面教師としてご覧ください。

≪ライブコマースとは?≫

「ライブコマース=ライブ配信でモノ・コトを売る」という新たな販売手法。

ライブコマース(英語:Live Commerce)とは、デジタルプラットフォーム上でライブ動画配信サービスなどを利用し、ライブ配信で商品を紹介する配信者と視聴者で双方向に連絡を取り合い商品を確認して販売する手法である。ライブストリーム・ショッピング(Livestream shopping)、ライブビデオ・ショッピング(live video shopping)とも呼ばれ、多くの場合、インフルエンサー協力の下に行われる。 (引用元: ライブコマース Wikipedia

自己紹介 最初はいわゆる広告代理店の営業担当者

まずはじめに自身の経歴を説明いたします。

ADWAYS以前 広告営業マンへ道のり

最初は広告媒体を飛び込み、テレアポで売ってくるような、ゴリゴリの広告代理店で広告主営業を行っておりました。1日のうちに夜中まで飛び込みやテレアポ500件を行うような『ド』新規営業を気合でこなすような会社です。新規営業と聞くとみなさん過酷な仕事内容を思い浮かべると思いますが、まさにその過酷さ×10くらいの仕事内容で合ってます(笑)

ただ、自分に取って営業とは過酷であることと同時に、自身における数々の成功体験や失敗体験を糧に営業スキルが磨かれていくことを実感する日々でした。トップ営業マンとなり営業チームの責任者となってからも基本的にはプレイングマネージャーという形式で営業を行っておりました。

その後、新規営業以外にも、新しいITの知識やスキルを求め、IT広告ソリューションの会社や広告企画を行うような会社で、広告企画営業や、広告ディレクション、新組織の立ち上げや新会社の立ち上げなどを行っておりました。

2011年ADWAYS入社後 広告メディア営業 AppDriverサービス責任者 戦略立案

2011年にADWAYSに入社。当時ADWAYSはAppDriverの売り出し中でした。 この当時スマホのサービスは目新しく、新しいことに興味津々の自分は、自身の売り込み用の企画書を持参し面接を受け、見事入社となりました。

ただ配属先としてはAppDriverではなくPCのアフィリエイトサービスのJANetのメディア担当者として配属されました(笑) 広告主営業の経験値以外のメディア担当という職務は今までやったことがないということから非常に興味がありました。メディア担当者として、メディアの広告枠の開拓や運営等々を行っていきながらも、プロジェクト管理や組織マネジメントを行っておりました。

また、その後、希望後数年越しではありますがAppDriverの事業部に責任者として異動し、事業戦略立案、プロジェクト管理等々を行いました。その時にとある戦略が成功することでサービス全体の売上増加に寄与し、半期MVPの受賞を受けることとなります。
その後、事業企画を行う部署へ異動し、事業のマーケティングや新規事業立案を行うようになっていきます。

2023年ADWAY DEEEE分社化をきっかけにアドテクノロジーDivにて新規事業のPdMへジョブチェンジ

自社の分社化に伴う組織変更により、営業部署から離れ開発部署であるアドテクノロジーDivに異動。新規プロダクト開発を担うPdMの部署が立ち上がり在籍することになります。
異動の際に伝えたことは『コードは書けませんよ』でした。PdMという職務自体がそもそも初めて聞く単語の為、とりあえずgoogleで検索して内容を把握したというレベルとなります。
この時、PdMの『P』がプロジェクトなのかプロダクトなのかもはっきりしない状態です(汗)

そんな中、新規プロダクト開発案がいくつか降りてきます。選択肢は『ライブコマース』と『新しいアフィリエイトの模索』の2択でした。今までのスキルを活かすとするならば後者となるところですが、
せっかく取り組む機会があるのならとまったく知見のないライブコマースを選択しました。
これまでもいくつか経験のないことにトライしておりましたが、新しいことは自身の探求のモチベーションに深く影響すると考えておりました。

書けば書くほど変わるリーンキャンバス

なにをやっていいかわからない 答えも問いもわからない症候群

ライブコマースと聞いてピンとくるイメージは中国のライバーによるライブコマースの流行でした。
関係会社に中国支社があるので早速話を聞きながらどういったビジネスにしていくか検討するも、
国内に合わせたビジネスがあまり思い浮かばず。。。。
ライブコマースってそもそもなんなんだっけ?となりました。
まさしくわからないだらけでわからないこともわからない。。。。

≪3つのわからない≫
①わからない ライブコマースの形がわからない
②わからない ライブコマースが儲かっているのかがわからない
③わからない ビジネスモデルがわからない

わからない時は情報不足。まずは調査となります。
社内関係者、海外のグループ会社、ライブコマースのビジネスを展開している企業などにヒアリングを行いました。徐々にライブコマースの全貌が明らかになっていくような気がしました。
また、その時に国内のライブコマース市場は我々が考えているような明確な成功事例やうまくいっていない企業が改善されたなどの事例が無い状態であることはわかりました。
ただし、これは事業を展開する上で果たして売上が立つのであろうか?という疑問も生まれました。(※①リーンキャンバスで間違っていたこと)

市場の事例からライブコマースを紐解いてみた

ライブコマースと聞くと皆さんはどのようなイメージを持たれるでしょうか?現在国内のライブコマースは大きく分けると以下のような形になっているかと思います。

≪国内のライブコマースの形≫
①企業が展開するSNSのライブ配信におけるライブコマース(Instagram YouTube、TikTok、、、、)
②インフルエンサーやライバーなどの第3者によるライブコマース
③企業サイト内でのライブコマース

この3つのライブコマースの形の中で果たしてどれがいいのか?どの形が自社にあっているのか?
どの形が売上が立ちやすいのか?どの形のライブコマースが今後伸びて行くのか?。。。
判断基準はまだありません。その為、それらを整理する為にスタートアップのビジネスモデルの可視化によく活用されるリーンキャンバスを活用し整理することにしました。(※②リーンキャンバスで間違っていたこと)

本来は手始めにマーケティング全般(市場分析、事業経済性分析、PEST分析、ファイブフォース分析、等々)を行い全体を整理するということが一般的かと思います。
事業企画の部署に所属していた時代に学んだスキルを活かすチャンス。
しかしこれらは調査するのに作業量が重く、非常に時間がかかり、スピードが上がらないというデメリットも潜んでいました。単に自分が遅いだけかもしれないですが。。。

≪リーンキャンバスとは≫ 1顧客の課題 2顧客セグメント 3独自の価値提案 4ソリューション 5チャネル 6収益の流れ 7コスト構造 8主要指標 9圧倒的な優位性 の9つの項目を順番に埋めることでビジネスが明確になるフレームワークです。マーケティング全般の項目から新規ビジネスに特化させた項目で構成されております。

新規事業はスピードが重要と考え、早速見よう見真似で取り掛かることにします。

量産される曖昧なリーンキャンバス

結果、ある程度形にはなり、それっぽいものが出来上がりましたが、なにか決め手を欠くものができあがりました。
もちろん、項目に関しても現時点では不明瞭な個所や、まだまだ考えられていない個所も多々あります。リーンキャンバスの精度を高める為に、更に情報収集を重ね、より詳細に情報をまとめることにしました。またソリューションのイメージもできていませんでした。何度も修正を繰り返していくうちに曖昧なビジネスのリーンキャンバスが量産されていきます(笑)

課題の粒度もどんどんと変わっていくことでソリューションも変化しターゲットも変化する。
まさにフレームワークに惑わされている状態(笑) 過去の事業成功例などもイメージしつつこれはもうやり方が間違っているというかやり方が芯を食ってないなと思いました。(※③リーンキャンバスで間違っていたこと)

≪リーンキャンバス間違っていたこと≫
①売上が上がるかという想像で物事をイメージした。
②ソリューションの形やビジネスモデルから入った。
③曖昧な情報で詳細を詰めた。

感覚と営業で乗り切ってきた『ツケ』が回ってきてます。
売れている物をさらに売る。売れていない物を売れるようにする。このあたりはできる自信がありますが、売れているか売れていないかわからない市場で、売れる物を構築し市場を作る。これ難しいですね。

≪量産される曖昧なリーンキャンバス≫

アイディアも重要だが進め方はもっと重要だった

新規プロダクトの成功率を高める為

そんな時あるビジネス書と出会います。
新規事業を経験や勘を頼りに進めることも大切だと思います。
ただ打率を高める上で様々な新規プロダクトを開発する上での成功率を高める為の方法を学ぶべきだと考えました。

≪参考にしたビジネス書≫

新規事業の実践論 | 麻生要一 |本 | 通販 | Amazon

本を読むことで頭が整理され、現在の状況や何をやらなければならないか把握できるようになりました。
新規プロダクトにはステージがあり、ステージごとにKPIを満たす必要がある。
また各ステージで行動すべき内容があり、それ以外は一旦、目を瞑る必要性もある。
具体的に各ステージの構成を簡単に説明すると以下のような形となっておりました。
内容を理解した上でまずはステージごとに実践し、MVP期まで一気に進めることにしました。

≪新規プロダクトにおけるステージ≫
WILL期(誕生)→ENTRY期→MVP期→ALPHA期→BETA期→EXIT期→Company(卒業)
※詳細はぜひ本を読んでいただくとよいと思います。

WILL(誕生)でやったこと

WILL期とは?おぼろげでも取り組みたい顧客課題を見つけ、そこへのWILLの形成を目指す段階

WILLは簡単に言うと自分自身がその事業を行う意味。その事業が自分である必要性。にあたると考えております。
WILLの形成はその後の事業を推進する上で自身のモチベーションに大きく作用することだと思います。
降ってきた企画案のライブコマースに関してはまず自分は全く興味はなかったです(笑)
強い言えば『新しいことに興味がある』という点のみ。
その為、まずはライブコマースに対して、おもしろい、好きと考える必要がありました。

その流れから様々なライブコマースをまずは利用してみる、利用することで得れる理解や興味を高めると言ったことを多数行うことでまずはライブコマースを好きになる努力を行いました。好きこそものの上手なれとはよく言ったもので好きな人には敵わないと感じるからです。目指すはこの業界で一番詳しい人になる。また命題とし自分の考えたことでライブコマース市場の課題を特定し解決する。ここを定めました。willにおける自身とビジネスの繋がりの強化はその後のモチベーションにも大きく作用すると思います。

ENTRY期でやったこと

ENTRY期とは?魅力的で検証可能な事業仮説の提示を目指す段階

ライブコマースにおける事業仮説を考えました。
考える項目は今までのリーンキャンバスと比べると少なく、顧客→課題→ソリューション→検証方法の4つです。もともとあった仮説やリーンキャンバスからの情報をよりシンプルにそぎ落とし事業仮説を整理しました。

先ほどのリーンキャンバスから比べるとものすごくシンプルになったことで気持ちも軽くなりました(笑) ただし、この段階でこの事業仮説が正しいかどうかは不明な状態となります。ここからが自身が一番重要だと感じた点となります。
この時に先に記したリーンキャンバスで何が間違っていたのか、また何をやらなければならなかったのかが徐々に鮮明になってきました。

≪事業仮説を構成する4つの要素≫
顧客→課題→ソリューション→検証方法

MVP期でやったこと

MVP期とは?事業性をともなった魅力的な事業仮説の提示を目指す段階

MVP期では立てた事業仮説を顧客に当てに行き検証を行うフェーズとなります。
目指すべきことは仮説が実証されているか?投資可能な事業計画か?となります。

運に恵まれ最初のテストマーケティングを実施してくれる企業が見つかりました。
早速、事業仮説の検証を行っていきます。
顧客の声を聞くことで事業仮説が合っているのか?合っていないのか?また、どんなことが必要なのか?などがより明確化されている感覚になります。もちろん新たな情報が入ってくることで仮説がどんどんと変わっていく感覚がありました。

具体的には1日2回の仮説検証の実施と記載されてました。またその回数は300回以上の顧客の声を聞くことと記載されています。この数がもちろん成功を保証しているわけではないとのことです。ただし、成功しているビジネスは圧倒的に顧客の声が多いとのことでした。

ライブコマースの配信をもちろん300回配信したほうがよいのです。ただしライブコマースの配信は準備と時間が現時点ではまだまだかかる状況でした。短期的に数の担保が難しいと判断しました。そこで実際に顧客の声を集めることの定義を、実際の検証+すべてのやり取りを明記することに変更することでコミュニケーション量の増加に集中することにしました。毎日顧客に何らかの質問やアイディアをぶつけることで回答得ていきながら実際の検証も踏まえつつ顧客の声が最大限詰まったスプレッドシートを毎日更新を行っていきました。

≪収集した顧客の声の例≫
・実際の配信に伴う検証後の分析結果に対する顧客の声
・撮影現場時でのコミュニケーションによるヒアリングの顧客の声
・SlackやZoomでの打ち合わせ時の声の収集

≪顧客の声 仮説検証サイクルシート≫

コミュニケーションが増えることで顧客から得られる情報も、忖度が徐々に薄れ、生のリアルに近い声に変化していく感覚がありました。仮説を考え、顧客の声を聞き、検証し、結果から仮説を調整し再度顧客の声を聞くというサイクルを繰り返します。とは言え、都度顧客の承諾、合意形成が必要となります。
やりたい検証と顧客が求める回答が実際はズレてしまうこともあります。自身の見解や意図をうまく伝えることができずに合意が取れなければそもそも仮説検証もできないです。

この合意形成業の繰り返しでもうやっていることは『営業活動』と一緒だなと(笑)
そして今までのリーンキャンバスなどの思考の中に足りなかったことが『顧客の声』なんだと気づきました。売上・ビジネスモデル・詳細を詰める時に『顧客の声』またそこから得られる課題が完全に抜けています。

よく言われることではあると思いますが、『情報は内にはなく外にある』とはまさにこれのことだなと感じた瞬間でした。わからないことがあったら社内で知っている人に聞いてみる。確かにこれも1つの調査方法であると思います。しかし、ビジネスを進める上で重要な『顧客の声』から得られる課題や回答に勝るものはないと思いました。

これらの行動を行うことで考えることがより明確になり、スピードも上がり、仮説が徐々に明確になり顧客課題の本質に近づいていきました。課題を把握することで解決策が導かれていく体験をしました。

やるべきことは、仮説を立て顧客に当てる。回答を得て仮説を練り直す。繰り返す。

まとめ

『顧客の声を聞け!!』

今回は新規プロダクトを立ち上げる上での失敗談と改善した内容として、
ステージwill~MVP期までに自身がどう考え何を行い何を学んだのかお話させていただきました。

≪学んだこと≫
①顧客の声を聞け。社内に情報はなかった。情報は社外にある。
②営業力は新規事業において必須。粘り強さと根気強さ。
③仮説と検証はシンプルにしてステップアップを意識。

新規プロダクトと聞くと何か特殊なスキル、プログラミングなど様々イメージを持たれる方も多いと思います。ここまでの話の中で、今回はまだ何もシステム開発を行っていないです。それだけ『顧客の声を聞け!!』における仮説検証が開発の前に重要なことだと思いました。
今回は営業出身者でも、コードを書けなくても、どのように新規プロダクト開発を進めていき、どのようなPdM業務を行っているかの一部を記載させていただきました。

まだMVP期は始まったばかりとなり、ここから『ライブコマースの事業仮説がどんどんと変化していく』こととなります。次回は、MVP期での顧客の声やライブコマースの仮説検証の内容と結果のお話ができればと思います。本記事内で『顧客の声を聞け!!』とありますが、顧客の声や課題は様々ありますがどこを改善するのが正解なのか?
ライブコマース市場の課題の特定『バーニングニーズ』などをお話できればと思います。

ここまで読んでいただきまして大変ありがとうございます。
次回もよろしくお願いいたします。

参考資料:新規事業の実践論 | 麻生要一 |本 | 通販 | Amazon