30名規模のエンジニア組織でOKRを運用してわかった5つのポイント

初めに

初めまして、新卒からAdwaysに入社し6年目になります。杉内と申します。
Webエンジニアやプロジェクトマネージャー、データアナリスト、広告運用者などを経験し、ここ2年程は複数の開発チームをマネジメントするエンジニアリングマネージャーをしています。

この記事で話したいこと

OKRを1.5年程、実践した所感をお伝えします。
読んでくださっているあなたの環境でOKRを実施する際、良い効果を出すことができるかどうかの判断情報の一つになれば幸いです。

注意

私の組織でOKRを最高にイケてる感じで使えているとは思っていません。
まだまだ使いこなせる余地もありますが、現状感じている部分と成果をお伝えします。

OKRとは?

OKRについて、簡単に説明いたします。

OKRは目標管理のフレームワークです。
目標とその結果をシンプルに明確化し、管理していくものです。
達成目標・目的(Objectives)を決め、その達成目標・目的のために必要な成果指標(Key Results)を設定し、進捗をトラッキングしていくことで目標達成を促進させます。

OKRの特徴

  • 【挑戦性】
    • 「大胆な目標」(Objective)と、そこに到達するために必要な「結果、成果指標」(Key Result)を明確に設定します
  • 【透明性】
    • 経営からチーム、時に個人までOKRを設定し、互いに関連付けて可視化することで、全体の方向性を整合させます
  • 【俊敏性】
    • 達成プランを高頻度で見直しながら、より高い目標を目指して改善していきます

事例紹介

米シアーズ(フォーチュン100に入る米国の小売事業会社)では、2万人の従業員に対してOKRを導入した結果、最終売上と個人の業績で明確な成果が表れたと発表しているデータがあります。(リンク
※1時間あたり、平均8.5%の業績向上に至る

OKRの運用の5つのポイント

私がこの記事で言いたい結論です。

  • OKRを策定する前に、戦略の認識を合わすこと
  • 重要なものに、選択・集中すること
  • OKRはQ毎に設定すること
  • 上位組織OKRの策定に、下位組織の人も関わること
  • OKRは図で表現すること

OKRの導入環境

以下が組織の状況です。

  • プロダクト特性
    • 社内ユーザー向けプロダクト
    • 企業クライアント様向けプロダクト
  • プロダクトの開発フェーズ
    • 運用フェーズ、新規開発フェーズなど、プロダクトのフェーズは様々
  • 組織構成
    • チーム規模は30名ほど
    • 開発チームは4つ
    • 開発プロダクトは8-10つ
  • プロダクトチーム体制
    • 事業側組織と開発側組織に分かれている
      • 事業側組織に、営業部署やプロダクトの方向性を管理する部署がある
      • 開発側組織に、開発チームを統括する部署がある
    • プロダクトチームは、事業側組織と開発側組織から様々なロールの人が入り、形成されている
  • OKR導入前の目標管理の仕組み
    • 半期方針という形でビジョンを掲げた
    • 組織で直近行うアクションも具体的に共有した

OKR運用上で得た気づき

OKRを実施していて得た知見を上げると30個ぐらい上げられるのですが、今回は最も重要だと思った5点に絞ってお話しします。

1. 「OKRを策定する前に、戦略の認識を合わすこと」

  • 課題
    • OKRの策定に時間がかかる。議論がまとまらない
      • やるべきことの議論をしていると、無限に議論が発散する
      • KRに対してOを包括的なものにしようと考える結果、決まらない
    • Oの抽象度が高く、結局、方向性とステップがわからない
  • 解決策
    • 戦略の認識を、「長期目標⇒短期目標(O)⇒達成要素(KR)」の順で合わせる
      • 長期目標(年間、2-3年)のビジョンとゴール(具体化したビジョン)の策定
        • (できれば)各プロダクトの長期的なゴールを策定
      • 長期目標に対するクォーター毎のステップを策定(≒来期クォーターの目標を策定)
        • ステップに到達する上で、開発進捗やチームレベルの向上は現実的なのか議論
      • 来期クォーターの各チーム(各プロダクト)の動きを認識合わせ
      • それぞれの具体的な内容と優先度を認識合わせ
  • 結果
    • 戦略が整っていれば、後はそれぞれの動き(KR)を指標化するだけで、OKRに落とし込める

2. 「重要なものに選択・集中すること」

  • 課題
    • OKRの情報量が多くて、わかりづらい
      • 重要な動きで、Oに結びつく内容なので、すべてKR化している
      • 優先度が高いアクションなので、個人が実行するタスクもKR化する
      • 実行する具体的なアクション(手段)をKRの文言にする
  • 解決策
    • 重要なものに選択・集中する
      • 全体を包括していなくても良いので、KRでは優先度最上位の要素のみ表現する
        • 実行するアクションとしては、他のドキュメントで表現可能
      • 組織全体が意識すべき内容が方針にあたるため、個人のタスクを表現するものではない
      • 目標達成の手段は開発チームや個人が考えるものなので、シンプルに達成したい要素だけをKRの文言化する
  • 結果
    • KRの数が減り、文言がシンプルになり、わかりやすくなる

3. 「OKRはQ毎に設定すること」

  • 課題
    • プロダクトの方向性や優先度は頻繁に変わる
      • それに伴い、事業全体の短期的な戦略も変わる可能性がある
  • 解決策
    • Q毎にOKRを策定する
  • 結果
    • 一見コストはかかるが、振り返りと同じく、方針に対する定期的なブラッシュアップはむしろ必須と感じた
      • 実態とそぐわない方針設定を回避したり、長期目標の達成可能性を上げる

4. 「上位組織OKRの策定には、下位組織の人も関わること」

  • 課題
    • 上位組織のOKRを下位組織が実行できない
      • 開発チームの人が上位組織のOKRを理解できていない(納得できていない)
      • 上位組織が実行するのに、リアリティのないOKRを設定してしまっている
  • 解決策
    • 下位組織のリーダーも含めて、上位組織OKRを策定する
  • 結果
    • お互いの階層間の認識違いが起きづらい
    • 納得感を持って、上位組織のOKR(戦略)を各チームで実行できる

5. 「OKRは図で表現すること」

  • 課題
    • 階層が違う大きな組織でOKRを実施していると、情報が多くてややこしい
  • 解決策
    • 図示できるツールを用いて、OKRを表現する
  • 結果
    • 自分のチームが上位組織のOKRにどう結び付いているかわかりやすくなる
    • 同じ階層の他チームが、どんな活動をしているかわかりやすくなる

OKRによるアウトカム(成果)

最後になりますがOKRを実施した組織の成果は、現状以下になります。

  • 組織全体を俯瞰した相関をイメージできる状態
    • 様々なチームの達成目標とそれが合わさり、生み出したい組織成果をイメージできる
  • 戦略を定期的に見直し、ブラッシュアップできている状態
    • 高頻度で戦略見直すことで、どの要素が黄色信号を出しているのか察知できる。
    • 実態とそぐわない方針設定を回避したり、組織の期待する成果に繋がっているのか定期的に確認することで、長期目標の達成可能性を上げれている
  • 上位組織と下位組織が統一性を持って、OKRと向き合えている状態
    • 開発チームのリーダーが上位組織の目標に対して理解が高く、チームメンバーに説明できるように情報が届いている

 

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