こんにちは。エンジニアリングマネージャーやっている山口です。
現場のエンジニアから「新しい技術を使いたいんです。」と相談を受けたことがありますか?
その時、あなたはどのようにその相談を受け止めていますか?
今回は、その相談の背景にどのような感情が存在するのかを考えてみたので書いてみたいと思います。
その発言の背景にある感情
わたしは、その発言の背景にある感情は多くは不安だと考えています。
この不安を生み出す一つが労働環境です。
労働環境
エンジニアを求めている会社は多数ありますが、その大半の労働環境が厳しいものだという印象が強いのではないでしょうか。
そして、今いる会社が恵まれたものであったとしても、その会社が将来にわたって安泰である保証を誰もしてくれないことを理解しています。
したがって、いまの環境と同じ程度、もしくは良い環境で働くことを考えた場合、自身の市場価値を損なわせない必要が出てきます。
一見エンジニアは、手に職がある職業という見られ方をするので、市場がなくならない限り安泰だと思われる傾向があると感じていますが、実際そうではありません。
それは手に職たりうる技術が日進月歩なものだからです。
日進月歩な技術
この5年を振り返っただけで、技術の移り変わりは早いと感じます。
しかも、ただ移り変わるのではなく、前世代の技術を踏まえたニューエイジ的なものになっていることが多く、その習得には前世代の技術に対する造詣があるほうが望ましいことが多くなっている印象です。
つまり、最近の技術の移り変わりは世代交代が重なるほどに学ぶコストが増える傾向があります。
そして、この状況は自身の市場価値が勝手に下がっていく地盤沈下のような現象になります。
なぜなら、これらの新しい技術はキャズムを超えたあたりからは使えることを求められるからです。
それも、チュートリアルをやって使えるようになったというようなレベルではなく、ビジネスドメインで利用していた経験から使えるというレベルであったりします。
我儘だとは思えない...
エンジニアの新しい技術を使いたいという要望は、わたしにとっては一概に我儘だと思うことは難しいです。
しかし、事業視点からすると我儘に見えてしまうかもしれません。
なぜ、そうなってしまうのでしょうか。
個人的に事業側の見ている時間軸と、エンジニアの見ている時間軸の差なのではないかと考えています。
時間軸の差
エンジニアの見ている時間軸
エンジニアの提案は中長期で価値を発揮することが多いと考えています。
新しい技術に関しても、開発効率や保守のしやすさを上げるような結果を生み出すことが多いと考えています。
また、新しい技術は人材確保の容易性を上げる効果もあると思います。
しかし、短期的には導入時の学習コストや切り替えコストを払う必要が出てきてしまいます。
これが、事業側の見ている時間軸とコンフリクトしてしまいます。
事業側の見ている時間軸
一概には言えないのですが、事業側の見ている時間軸は短期的な価値に向いていることが多いと考えています。
これは、その期の売上や利益が会社の価値や存続に直接的に影響するからです。
したがって、短期的にコストを払う施策は不合理に写ってしまう傾向が高いのではないでしょうか。
結果、エンジニアの提案してくる新しい技術が中長期で価値があったとしても、短期的なコストが過大に評価され、理解することが難しい。結果、我儘に見えてしまう構造なのではないでしょうか。
時間軸を合わせる
つまり、時間軸の差を解消することが出来ると、コンフリクトは解消でき我儘に見えてしまうとう現象は減らせると考えています。
したがって、事業としての中長期のロードマップを事業に関わっているすべての人が意識できる状態を作ることが重要だと考えます。
そして、そのロードマップのどこに価値がでる新しい技術なのかをエンジニアが説明できるようになることで、新しい技術を導入する議論を建設的に行えると考えています。
まとめ
エンジニアの新しい技術を使いたいという要望は、いっけん我儘に見えてしまいます。
しかし、それはマズローの自己実現理論における安全欲求に近しいもので、ないがしろにすることは難しいです。
しっかりと受け止めるには、我儘に見えてしまう構造を変えていくと良いでしょう。
変えるための方法の一つが事業の中長期のロードマップを作ることであると考えています。