社内の無線LANに四苦八苦した記録

挨拶

皆さん初めまして。過去に私の記事を読んでくれた方はお久しぶりです。
技術本部でリードインフラエンジニアとして、社内ネットワークの設計、構築、運用などなどを担当している kawatatsu です。
今まで役職を言うことは無かったですが、苦節10年、私も名乗れる職位を手に入れました。
その分、仕事の難易度も上がり四苦八苦の日々を過ごしています。
今回のブログでは本社移転した際に発生した、無線LAN(Wi-Fi)のチューニングをしたお話をまとめていこうと思います。
広いエリアにWi-Fiを構築する上で躓いた部分や、パラメーターを変更した際にユーザーに与えた影響について共有できれば幸いです。
興味を持たれましたら、是非下へスクロールし、最後まで読んで頂けますと幸いです。

背景

Adwaysの本社は6月に移転を行っています。
移転をするということは、移転先のネットワークを構築する必要があります。
今回の移転ではサーバーレス化を行っていたりするのですが、本記事ではWi-Fiについて説明していきます。
私は有線大好き人間なのですが、最近のノートPCにはLANポートがついている方が珍しくなってきました。(個人的には嘆かわしいです。。。) つまり移転先のテナントにもWi-Fiを完備する必要があるということですね。

弊社には今年購入したクラウド管理可能な無線APがあり、新拠点は敷地面積が小さくなるため、無線APは流用することにしました。

Wi-Fiのチューニング要素

一般家庭のように無線APが少数ならばそこまで意識する必要はありませんが、弊社では数十台の無線APを設置し、端末の移動に合わせて最適な無線APにローミングされるようになっています。
その為、有線の時には意識しなかった無線特有の事柄について意識することもあります。
以下は一例ですが次のようなものがあります。

  • 電波強度
    • 無線APが発する電波の強さ
  • チャンネル
    • 無線APが利用する電波のタイミング
  • 干渉
    • 他機器が利用しているチャンネルと同じチャンネルを使うことで発生する
    • チャンネルが被った機器同士が帯域を奪い合ってしまうため、不安定になる。。。らしい
      • 私はこの理屈がよくわかっていないため曖昧な表現となり申し訳ないです
  • 帯域幅
    • 通信を行う際のAP-端末間での通り道の太さ
    • 20MHz, 40MHz, 80MHz, 160MHz のように単位には MHzを使う
    • 車でたとえるならば、20MHzだと1車線、40MHzで2車線、80MHzで4車線という感じ
      • イメージとしては、無線APから端末に対して、車線の本数分繋ぐ感じです
  • etc...

無線は物理的に目に見えないため、それらの因果関係をイメージするのが難しいです。
(私はイメージできない物事に対する理解力が乏しいため、ネットワークでは無線が苦手です)

オフィスのWi-Fi

新しいオフィスでは、有線の速度は 500Mbps 程出ていましたが、無線は 120~150Mbps 程しか出ていませんでした。
原因の特定と、無線のチューニングを行った際に発生したことについてまとめていきます。

case0. 原因個所の特定

Wi-Fiだと有線の5分の1程のスピードしかでない原因の特定をまず行いました。
有線は FW - SW - PC と繋げて 500Mbps を出していましたが、無線の場合は、FW - PoESW - AP - PC となるので、経由する機器が多くなります。
また、経由する配線の影響や、パケットのフラグメンテーション化の影響も疑いました。
行ったこととしてはシンプルで、各機器に該当する部分に直接PCを接続してスピードテストを行いました。

結果としては、どのポイントでも有線で接続すれば 500Mbps 越えのスピードが出ることを確認したため、ケーブルやAP以外の機器に問題はなく、VLAN-IDによるフラグメンテーション化の影響もなさそうでした。

その為、ボトルネックとなっている部分は無線APの可能性が高く、無線APの設定チューニングを始めました。

case1. 推奨設定の適用

Wi-Fiにおける各種パラメーターを個別に設定することが難しかったため、基本的に推奨となる設定値や電波干渉の確認を行いました。
各APの電波強度の最大値、最小値をチューニングしたところ、無線AP間の距離が近すぎるのか、ほぼすべてのAPで、電波強度は設定した範囲の最低値となりました。
チャンネル自体の重複も少なく、その地点でスピードテストやWebブラウジングをしても極端に不安定になることもなく、通信が行えました。

SSIDや利用する周波数は 2.4G帯、5G帯とありますが、SSIDが多かったり、2.4G帯はBluetoothと干渉しやすかったりするため、基本的に5GHzのみ、SSIDも必要最低限にし、安定を図りました。

結論からいうと、これらの設定をしてスピードは早くなりませんでしたが、通信は安定したため、ユーザーからの繋がらないといった問い合わせは減少しました。
しかし有線程のスピードはまだ出ていなかったので、チューニングを引き続き行っていきました。

case2. 帯域幅の変更

弊社で使っているAPの推奨設定では、帯域幅は 20MHz が推奨となっていましたが、他の記述や帯域幅について調べると、帯域幅が増えることで、2倍、4倍、8倍とスピードが上がっていることが分かりました。
LAGのように複数のチャンネルを束ねて通信を行えるようになるので、帯域幅を上げることでスピードが改善すると思い、20MHz -> 80MHz への変更を行いました。

その結果、問題が発生しました。

人が少ない=端末数が少ない時は快適でしたが、人が増えた場合の通信速度は著しく低下し、通信も不安定になってしまいました。

1APあたり20クライアント、1クライアント当たり4本のラインと考えるとAPの処理能力がひっ迫したのでは?と想像しましたが、SNMPによる監視が行えていなかったため、詳細は分かりませんでした。

その後の対応としては、帯域幅の自動調整機能が追加されたため、それを有効にすることで、各無線AP毎に周波数帯域が20, 40, 80MHz のいずれかで動作するようになりました。

その結果、通信速度においては、平均80 ~ 120Mbpsでチューニング前と比べ、あまり変化はありませんでしたが、通信は安定するようになりました。

caseX. おもしろ事例

社員の方にとっては面白くないのですが、推奨設定の中にQoSと最初の数秒はQoSを掛けない設定がありました。
Web会議系のトラフィックを最優先にしていた状況で発生したことですが、Webブラウジングは全くできない状況だったにも関わらず、Web会議ツールは安定して通信できていたという報告を聞き、QoSは適切に適用されていると感じました。
ようはWeb会議のトラフィックだけでAPがいっぱいいっぱいになったということだと思います。

まとめ

今回の記事では問題の解決というよりも、ある現象に対してこのようにアプローチしたことで安定したという書き方のため、後味はあまりよろしくないのですが、Wi-Fi設定に試行錯誤し、奮闘したことが伝われば幸いです。
特に安易な設定変更による、ユーザーに与える影響について皆様が同じ轍を踏まないように共有できていれば嬉しいです。

企業で利用する無線APは家庭用のものと異なり、個々の設定が多く、理解しなければならないことも多いため、家庭と比べて難易度は跳ね上がります。
しかしながらその仕組みを理解し、最適な構成を作り、想定通りにことが進んだ際の達成感はひと際だと思います。

最近はクラウド化やSASEソリューション、SD-WANといったように実際に見えないネットワークを構築、管理することが多いため、ネットワークの実感は画面上での出来事となってしまうことも多々あります。
そんな中でも、実際の機器に関わる部分についても日々研鑽をしていくことが大事だと感じた一幕でした。

それでは皆様、また機会があればよろしくお願いします。