オープニング
皆さん、こんにちは!
ADWAYS DEEE アドプラットフォーム事業部でマネジャーをやっている「tomoD」です。
以前、執筆したエンジニアブログで 「プロジェクトクローズガイドライン」 についてご紹介しました。(まだ読んでいない方はぜひ!)
その記事のまとめ部分でこんなことを書きました。
「クローズがあるのであれば・・・そう、キックオフもあります。プロジェクトキックオフガイドライン。乞うご期待!」
あの一文を覚えていてくださった方、お待たせしました。今回は、その 「プロジェクトキックオフ」 のお話です。
そして今回は「ガイドラインを作った」だけでは終わりません。
「AIを使って、プロジェクトの開始をルール化・効率化しようとした」 話まで含めてご紹介します。
目次
背景・きっかけ
課題は「終わり」だけではなかった・・・
前回の記事では「プロジェクトの終わり」が曖昧になりがちという課題を取り上げました。
しかし、改めて振り返ると、課題の根っこは 「終わり」だけではなく「始まり」にもある ことに気づきました。
具体的には、以下の2つの課題が見えてきました。
課題1:プロジェクトの定義や内容がバラバラ
プロジェクトを始めるとき、こんな経験はありませんか?
- 「なぜこのプロジェクトをやるのか?」が言語化されていない
- ゴール・完了の定義が曖昧なまま動き出してしまい、ずるずるとプロジェクトが長引いてしまう
- 関係者の認識が揃わないまま、各自が動いてしまっており、認識のずれが生じてしまう
- 見込み効果が定義されておらず、プロジェクトのアウトカムが出せたか判断できない
プロジェクトクローズのガイドラインを作って「終わりを明確にする」ことは実現できましたが、「そもそも始まりが曖昧だとクローズしようにも判断基準がない」 という声が現場からも聞こえてきました。マネジメントの視点でも、案件の優先度判断や見込み効果と実績の比較など、客観的な評価がしにくい状態にありました。
課題2:プロジェクト管理方法がバラバラ
少し別軸になりますが、プロジェクトの定義だけではなく、 「どう管理するか」「どんなドキュメントを残すべきか」 もチームごとに曖昧な運用になっていました。
組織としては、ドキュメントの分類・管理方針を定めていますが、方針があっても 「浸透させる」ことが難しい というのが現実です。

結果として新しくプロジェクトを開始するメンバーが「何から手をつければいいかわからない」と迷子になったり、プロジェクト管理のやり方がチームによってバラバラになる、という状況が生まれていました。
そして、この課題はAI活用が進む現代においてより深刻になります。
AIに仕事を任せるためには、 「何をやるのか」「なぜやるのか」が言語化・ドキュメント化されていること が前提です。人間同士なら「なんとなく伝わる」曖昧なコンテキストも、AIには通じません。ドキュメントが整備されていなければ、AIへの指示は的外れになり、せっかくのAI活用の価値が最大化されません。
AIを活かすチームになるためには、 「ドキュメントを整える」ことが避けられない のです。
気づき
つまり、 プロジェクトの「終わり」を機能させるためには、「始まり」をしっかり設計することが不可欠 だということがわかりました。
また、組織的にAI活用を強化する流れもあり、 「AIを使って、プロジェクト開始時の準備をもっとラクにできるのでは?」 というアイデアが生まれました。
どのように課題を解決したのか
課題1(プロジェクトの定義や内容がバラバラ)への対応:プロジェクト定義を標準化する(テンプレート化)
まず「プロジェクト開始時に明確にしておくべき項目」を整理しました。
組織ではドキュメント管理にNotionを利用しています。Notionで管理しているプロジェクトのテンプレートに、以下のような項目を定義しました。
- プロジェクト概要 - OKR or MVP(目標) - 完了の定義 - このPJでやらないこと - 見込み効果 - ステークホルダー(関わる人・チーム) - ゼロ見積もり(クリティカルパス) - ふりかえり(実施後) - 関連リンク
Claude Codeのカスタムスラッシュコマンド(Skills)を使ったプロジェクトキックオフの自動化 を行い、/project-kickoff を実行するだけで、プロジェクトページの叩き台を自動で作成してくれます。
課題2(プロジェクト管理方法がバラバラ)への対応:プロジェクト管理方法を標準化する
「どんなドキュメントを残すべきか」についても、テンプレートを整備しました。
プロジェクトドキュメント用のNotionテンプレートを用意し、プロジェクトの種類に応じて 「残すべきドキュメントの型」 を標準化しました。これにより、新しくプロジェクトを開始するメンバーが迷わず動き出せるようになります。

そして /project-kickoff は、プロジェクトページだけでなく プロジェクトドキュメントページも同時に自動作成 します。「プロジェクトを始めます」と伝えるだけで、定義ページと管理ページの両方が揃った状態でスタートを切ることができます。
Skillの動きのイメージはこんな感じです。
- ユーザーが
/project-kickoffを実行 - AIがプロジェクト名・概要などをヒアリング
- Notionの プロジェクトページ と プロジェクトドキュメントページ を自動作成
工夫したこと:AIと「一緒に作る」設計
重要視したのは 「AIが全部やろうとしない」 設計です。
完了の定義や見込み効果のような 「意思決定を伴う項目」は、必ず人間が確認・判断するステップが必要です 。チームによっては、メンバー全員で認識を合わせて作成するパターンもあります。AIはあくまで「叩き台を作る」「選択肢を提示する」役割に留めておき、最後の判断は人間がする、というスタンスを意識しました。
また、完璧を目指さず「ミニマムな状態」でまず動かし、各チームで調整してもらえるようにしています。まずは動くものを作って育てていく、このアプローチも今回の大事なポイントです。
大変だった、苦労したこと
AIだけでは完結しないものがある
Skillを作る過程で一番苦労したのは、 「AIがどこまでやって、人間がどこからやるか」の線引き でした。
完了の定義や見込み効果のような項目は、プロジェクトのコンテキストや組織の事情、ビジネスドメインを深く理解していないと、的外れな内容になってしまいます。また、「残すべきドキュメントの種類」もプロジェクトの性質によって変わるため、完全にテンプレート化することには限界がありました。
「AIは作業を速くしてくれるが、意思決定の代わりはできない」 というシンプルな事実を、実際に作ってみて改めて実感しました。
どのように乗り越えたか
「全部任せる」から「一緒に作る」へ発想を転換しました。
AIに任せる部分はテンプレートの生成・Notionページの作成など 「作業の自動化」 に絞り、プロジェクトの目的・完了の定義・残すドキュメントの判断など 「意思決定が必要な部分」は人間が決める フローにしました。
(ただし、昨今のAIの進化のスピードを考慮すると、AIが意思決定を代替する日もそう遠くないかもしれません)
解決後の効果
自己評価
Skillの導入によって、プロジェクト開始時の準備にかかる時間が大幅に短縮されました。
以前は「テンプレートを開いて、何を書けばいいか悩んで、気づいたら何も書かずに動き出していた」という状況がありましたが、今では 「プロジェクトページとドキュメントページの叩き台が同時に完成する」 ようになりました。(手動で調べながら対応すると10分以上かかる作業が、1分以内できるようになりました。)
また、残すべきドキュメントが管理・整備されることで、今後のAI活用の質も上がっていくはずです。
メンバーの反応
Skillが完成したタイミングで、社内Slackでエンジニア向けに周知しました。

リリース直後でまだ実際の利用実績はありませんが、 👍リアクションが12件! 思っていた以上の反響があり、「プロジェクト開始時の準備の大変さ・曖昧さ」がメンバーにとっても共感できる課題だということを実感できました。
また、「使ってみます!」という声もあり、チームがこういった取り組みに前向きな雰囲気を感じられて、とても嬉しかったです。厳しいフィードバックも期待できそうですね。笑
プロセス関連の改善は、利用をしてみてその価値やさらなる改善が発生します。まずは気軽に試してもらえる雰囲気づくりを意識していきたいと思います。
今後どうしていきたいか
改善ポイント
現状のSkillは「プロジェクトを始める」というユースケースに特化していますが、 プロジェクトの進行中にもAIを活用できる仕組み を整えていきたいです。
例えば、プロジェクトの中間時点で「完了の定義に対する進捗確認」や「見込み効果の再評価」をAIが実施してくれるskillやエージェントがあると、プロジェクト管理の質がさらに上がるはずです。
ガイドラインの拡充
プロジェクトを進める上で「始まり」と「終わり」を明確にすることの重要性は、チームの規模や役割に関わらず同じはずです。クローズガイドラインと合わせて、 「プロジェクトガイドラインシリーズ」として体系化していく ことを目指しています。
プロジェクトの目的・完了の定義・見込み効果が明確に言語化されていれば、AIへの指示も具体的になり、AIが出すアウトプットの精度が自然と高まります。そして質の高いアウトプットが積み重なることで、さらにプロジェクト管理の効率化が進む。
つまり、 「ガイドライン/ドキュメントを整備する → AIの品質が上がる → 開発効率が上がる → さらにガイドライン/ドキュメントが磨かれる」 というサイクルを回すことができると考えています。
AIを強いパートナーにするためには、AIに渡すコンテキストの質を上げることが不可欠です。プロジェクト管理の仕組みとAI活用を切り離して考えるのではなく、 両輪として一緒に育てていく ことが、これからの開発組織のあり方だと思っています。
展望
AIツールの進化はすさまじく、開発や実装だけでなく、今後さらに 「AIがプロジェクト管理などマネジメント領域でも人のパートナー」になっていく時代 が来ると思っています。
ただ、AIに全てを委ねるのではなく、 「意思決定は人間が行い、AIは作業と思考の整理を補助する」 というスタンスは変えずに活用し続けていきたいです。(今のところ当分、この構図に変化はないはずです。)
プロジェクトの始まりと終わりをしっかり設計することで、チーム全体がもっとワクワクしながらプロジェクトに向き合える文化を作っていけたら最高です。
まとめ
今回は 「プロジェクト開始時に明確にしておくべきことをAIを使ってルール化・効率化した」 取り組みをご紹介しました。
まとめると、こうなります。
- プロジェクトの「始まり」が曖昧だと「終わり」も機能しない
- Claude CodeのSkillsを活用して、プロジェクトキックオフを自動化した
- 「AIが全部やる」のではなく「AIと一緒に作る」設計が大切
- AIは作業を速くしてくれるが、意思決定の代わりはできない
前回の「プロジェクトの終活」と、今回の「プロジェクトのはじまり」。
プロジェクトのライフサイクルの二つのポイントを押さえることができました。この調子で、AIありきのプロジェクトライフサイクルをしっかり設計できるようになっていきたいと思います。
プロジェクト管理にお悩みの方、AIの活用方法を模索している方の参考に少しでもなれば嬉しいです。
また次回もよろしくお願いします!